ちょっとご無沙汰していました「燃えよ剣」の感想シリーズ。
今回は『組織』について
「組織」を司馬遼太郎は次のように定義している。
「ある限定された目標をめざしてナイフのようにするどく、機械のように無駄なく構築された人為的協同体である」 (「司馬遼太郎が考えたこと10」P24)
同書に『奇妙さ』という題名の文章によると、
「新選組以前には、日本に組織といえるほどのものはなかった」「新選組は、文化史的にいって、日本の組織の最初ではないか」(同書P24)と漠然と考えていたと。
司馬さんは「組織」について“閑思案”をめぐらし、新選組のあたりをうろうろした。そして新選組を作り、維持したのは誰かということで、土方歳三に行き着いたようである。(ただ、これが「燃えよ剣」の直接の執筆動機ではないと断っている)
さて、僕のイメージの中にある新選組は、「ある限定された目標」の為に設立され、その目標を見事なまでに遂行している。目標とは過激浪士を殺すことである。
「燃えよ剣」では、土方がこの組織をいかに統制し、どう機能させるかに心を砕いている様子が書かれている。幕末動乱期の京の都にあって、周囲の状況が変わっても新選組を強くすることが土方の思考の中心になっている。
この小説に描かれる土方歳三は、周りに左右されず現実をしっかり見つめて、目標にぶれがない。ここが凄いことだと思うし、魅力のひとつだと思う。
また、新選組の「副長」というポストを作って、これを務めている。実質的に新選組を支配しているポストだ。トップになろうとする野心を一切持たず、副長の任務を全うする。
分をわきまえ、自己の能力を最大限に発揮している。ここが見ていてかっこいいのだな。
組織についてもう少しありますが、次回にします。
2 件のコメント:
日本の組織というのは、第一人者は象徴でその下の参謀役が実質的に動かすとうまくいく、というのがうまく行くこつらしいんですよね。
第一人者が引っ張りすぎると、たとえば信長みたいに暗殺されるというようなことになるし、平安時代は王朝最盛期ですが天皇は象徴であって実際に権力を持って動かしていたのは摂政関白でした。
鎌倉時代、源氏将軍は3代で滅びますが、北条氏は第一戦に出ることなく、頼朝の親戚に当たる公家を将軍に据えて実質的には何もさせず、自分たちが実務をこなすという体制で過ごしました。
江戸時代は譜代大名が実務をこなしますが、あれは必ず複数で仕事をするんですよね。おもしろいですね。江戸町奉行も南町と北町があって月番交替といいますから、毎月交替で担当していたのですね。
土方の考え方というのは、そういうわけで、あの時代としてはかなり機能本位なおもしろいものだったと思います。その分仲間もたくさん斬ったわけで、憎まれ役も進んで引き受けたわけですが。
ぱぐさん、こんにちは。
No.2のあり方について初めて知ったのが、堺屋太一「豊臣秀長」です。それ以来関心のあるテーマです。
個人としてのNo.2のあり方や、組織上のNo.2のポストについても何か書けたらと思っています。
土方は近藤勇をトップとして立て、No.2の仕事をしっかりやっているという印象をもっています。
刺激のあるコメントをありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
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