「燃えよ剣」読後感想(1)
まずは極めて主観的な感想から。
上巻を読んでいて、「司馬遼太郎は土方歳三という人物が好きなのだろうか」という疑念が、常に頭の中にあった。
小説は「男の魅力を書く」としている司馬遼太郎のイメージが強くあって、魅力ある人物=作者が好きな人間という図式を、僕が勝手に作り上げているのかもしれない。
ただ何度も繰り返される「無愛想」 という言葉に、司馬さんは土方が好きではないと思ってしまったのだろう。
小説はある人物が好きだから書き、嫌いだから書かないという単純なものではないと思う。いろいろな人物を描きたいから書くのだろう。小悪魔から巨悪まで書きたくて書くこともあろう。それが好きだろうとそうでなかろうと。
司馬さんの好き嫌いはわからないが、「司馬遼太郎は」という仮面をつけて、僕の好みを無意識的に言っているのかもしれない。
ところが下巻になると印象が変わってくる。
「奇妙な」という表現を使っているところがあるが、土方へ情が移っているような感じがする。
そして五稜郭を官軍(明治政府側)が攻めるあたりになると、「哀切」の情がものすごく迫ってきた。
体の奥底からぐぐっとこみあげるのもがあった。
以上が主観的な感情をまとめました。次回は「組織」について
2 件のコメント:
ふだんは無愛想なのに、ときどきかわいいところがある、というのが『燃えよ剣』の描き方だったと思います。女から見てもいいですよ、そういうのって。
沖田総司はそういう歳三をよくわかっていて、からかったりしている。
この二人が大阪でだったかなあ、京都時代を振り返る会話をするところが、わたしは一番好きでした。
あとはお雪さんが出てくるところですね。
夕陽丘には行ったことがあって、ああ、ここが、と思いましたよ。
司馬遼太郎が奥さんの福田みどりさんとよく歩いた場所でもあったそうです。
ぱぐさん、引き続きのコメントありがとうございます。
「かわいいところがある」という女性からの視点は、勉強になります。
「燃えよ剣」執筆当時は大阪城の近くに住んでいたと思いますから、奥さんとよく歩いた場所というのは頷けます。
お雪との場面は他の場面と好対照になっていて、小説としての魅力をアップさせていると思います。
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