2008年1月8日火曜日

彫るように読む

司馬遼太郎「峠」(中)P392~393より
古賀謹一郎(河井継之助が江戸遊学時代に学んだ塾の先生)が、河井を評した言葉を福沢諭吉が覚えていて、それを語る場面

「古賀先生が、
― 河井という男は、妙だ。
と、しきりにいったのである。書物というのはわずかの数量しか読まない。王陽明全集と宋明二代の語録。明清二代の奏議類ぐらいのものである。それを彫るように読む。気に入ったところは書写する。あとはしきりと物事を考えている。」

『彫るように読む』とは、どんな読み方だろう。
これについてずっと考えている。

(上)P275の河井と吉田稔麿(吉田松陰の弟子)では次のように言っている。
「私は気に入った書物しか読まない。そういう書物があれば何度も読む、 会心のところに至れば百度も読む(以下略)」

方法はなんとなくわかる。
ただ、何をどう彫るかはわからない。そしてどう血肉とするかである。
河井はこの読み方で心胆を練ったと思う。生き様もここからきていることが大いにあると思う。

しばらくこの言葉が頭の中あるだろう。これについて、なんとはなく思いめぐらすことがあるだろう。

「彫るように読む」。今年最初に出会ったずしりと重いことばである。

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